第11章 春は あけぼの
ふわ、、、っ
ふいに沙織の頭に柔らかい何かが触れた。
「え、、、っ?」
目を見開いて見上げると荒北が眩しそうに目を細めていた。
頭に乗る柔らかな感触はどこか懐かしくて、
沙織は涙を隠すことも忘れて目を見開いた。
「ハァ、、、ったく、ウッセーと思ったら、、、」
「あ、、、その、、、ごめん」
溜息混じりに頭を掻く荒北。
起こしてしまったことを反射的に謝った。
、、、どうしよう。顔、、、見られた?
沙織は謝ると同時に俯いた。
嫌われる、、、。
次に何を言われるか。
沙織は覚悟を決めて目を閉じた。
「、、、で?」
そんな沙織を荒北の鋭い瞳が捉える。
沙織はその視線を無視することはできなかった。
「、、、落ちたのかヨ?」
「、、、」
どくん、と心臓が嫌な音を立てる。
沙織は何も言わずに頷いた。
今、少しでも言葉を発したらダメになってしまいそうだった。
「、、、そーか」
頭に置かれていた手がゆっくりと落ちた。
沙織は再び目をギュッと閉じた。
荒北の何かを諦めたような声が辛い。
気を抜けば胸の奥から何かが込み上げて、そのまま溢れてしまいそうだった。
「、、、っ」
そしてついに堪え切れずしゃくり上げてしまいそうになった時、
フワッ
気付いたら沙織は荒北の腕の中にいた。