第10章 冬はつとめて
「テメェ、何笑ってンだっつーの!」
「笑ってないさ、、、ププ」
「笑ってンじゃナァイ!!」
荒北が新開に掴みかかりそうになった時、
「、、、それで、新開。お前はどうだったんだ?」
福富がそれを制し、新開を見た。
東堂と荒北も目を細めて見つめた。
もちろん受かった。
不敵に笑って、すぐにそう返ってくると思っていた。
しかし3人の視線を集めた新開は一瞬目を見開き、そして
視線を落とした。
その様子にハッとする。
まさか、、、。
もちろん全員が受かると信じて疑わなかった。
荒北は拳を握った。
「ハ、、、ッ!何もったいぶってンだヨ!!どうせ受かってンだろ?早く答えろヨ!バァカが!」
「、、、」
新開の返事はない。
その場に重苦しい空気が流れた。
「新開。貴様、まさか、、、嘘だろう」
「、、、」
福富だけは黙って、ただ新開を鋭く見つめた。
「、、、クッソ!コラァ!受験なんて余裕のヨッチャンだろーが!テメェはチビ眼鏡と同じトコ行くんじゃねェのかヨ!ヘマこいたなんて許さねェぞ、オイ!」
荒北は叫んだ。
新開のことだけじゃない。
未だに現れない誰かさんのことが頭に浮かんだのをすぐに振り切って、祈るように叫んだ。
「靖友、、、」
その声にハッとしたように新開は顔を上げ、ゆっくりと口を開いた。
「実は、、、」
「、、、ッ!」
3人が覚悟を決め息を呑んだ時、突然新開はパッ人差し指を差し出した。
「もちろん。合格さ」
「「、、、ハァッ!!?」」
「、、、。」
ニヤリと笑う新開に、
「クッソ、死ね!コラァ!!」
荒北はすぐに飛びかかった。
「ごめん。つい、、、な?」
そう言ってバチンと放たれたウィンクがまたムカつく。
「シャレになんねェんだヨ!バァーカ!」
「まったくだ。なぁ、福も何か言ってやれ」
「、、、受かったなら良い」
「寿一、、、すまなかった」
「もういい。そんなことよりも早く部室へ行って報告をするぞ」
「ったく、甘いんだヨ、福チャンは、、、」