第10章 冬はつとめて
「近所迷惑になる、もうやめておけ」
「わ、分かってるヨ!!」
福富には逆らえない。冷静に注意されて、バツが悪くなった荒北は話を変えることにした。
「と、ところで福チャンはどーだったんだ?この時間に来たってことは、、、」
「もちろんだ。受かっている」
「、、、ッ!!こンの!!鉄仮面!!その顔、わかりにくいんだヨ!ヤルじゃナァイ!!さすが福チャン!!もっと喜べっつーの!!」
友の朗報に思わず声が大きくなる。
「、、、荒北、近所迷惑だ」
「ウッセーヨ!迷惑なんて知るか、こんな時に喜ばねェでいつ喜ぶんだヨ!あ!?」
そう言って勢い任せに肩に腕を回したが、振りほどかれないあたり福富も満更でもなさそうだ。
荒北がさらに声を上げようとした時、
「校門前で五月蝿いぞ!荒北!福も迷惑そうだ、その手を離せ」
その鼻にかかった声に荒北は顔を歪めた。
「ア!!?テメェ、東堂じゃねェか!ウッセ!福チャンはこれで喜んでンだから、イイんだヨ。バァカ!」
「喜んでは、、、いない」
「エ!?」
「アッハッハッハ!ほら見ろ。福の不機嫌な顔も分からんとは情け無い」
「ウッセ!福チャンはいつもこーゆー顔だろが!!」
「んなっ!、、、ゴホン、ところで東堂、お前もこの時間にここにいるということは、そういうことだと思って間違いないな?」
福富は一瞬荒北の発言に狼狽えたが、すぐにいつもの調子で東堂に問いかけた。
ニヤリと笑う東堂。
「ふん!当然だろう!なにせ天は俺に、、、」
「そうか。さすがだ」
東堂の言葉を遮る福富。
「福〜!」
「ハッ!バァカ!」
嘆く東堂に荒北は笑った。
「、、、これであとは新開だけか」
気にせずに福富が続けた時、
「俺がどうかしたかい?」
「「「うわっ!!」」」
噂をすれば何とやらだ。
突然現れた新開に3人で飛び跳ねる。
「、、、ッ!くぉら新開!!急に現れてンじねェヨ!!」
「そ、そーだぞ、新開!ビックリするではないかアッ!」
「はは、ごめん。ここ、門の近くだし、入った所で自分の名前が聞こえたからさ」
そう言う新開に悪びれた様子はなく、どちらかと言うと笑うのを必死でこらえている顔だ。