第10章 冬はつとめて
最悪だ。
終わったらサッサと帰ろうと思ってたのにヨ。
こういうのは大抵前の席から帰ることができる。
荒北は自分は最後に回されることを悟って溜息を吐いた。
早く教室を出て、アイツを探して、、、
会えたらナ、なんて。
そんなことを考えていた。
少しだけヘコんだ気持ちを切り替えようと、頬づえをつきながら、となりの席から順番にライバルたちを見ていく。
隣には大人しそうな男子生徒。
いかにも勉強してます!って感じのメガネは、机の上にノートやら単語帳やらを並べ立て、まだまだ縋りつこうとしているらしい。
ったく、後悔すンのが遅いんだヨ、バァーカ。
今それやるんなら、もっと早くやっとけっつーの!
コイツには勝ったな!
コイツにも勝った、、、コイツにも、、、!
勝った、勝った、勝った!
ハ!!もしかして俺、受かったンじゃナイ!?
調子よく後ろから順番に一人一人を値踏みする。
っつーか工学部!!男ばっかじゃナァイ!!
しかも揃いも揃って地味って何だヨ!!
可愛い女子はいねェのかよ!?
「はー、 、、」
受験者が男ばかりなのに気づいて嫌気がさした荒北は、溜息を吐いて窓の外を眺めた。
「会いてェ、、、」
雪が降る窓の外にはもうほとんど受験生は歩いていない。
もうほとんどが各教室へ入ったのだろう。
そして恐らく沙織も、同じ敷地内のどこかに、、、。
そう思うと同時に思わず出た心の内。
隣の男子生徒が不思議そうに荒北を見たがスルーして、
荒北は想いを飲み込むように目を閉じた。