• テキストサイズ

隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第10章 冬はつとめて


マフラーを巻くのは好きではなかった。
この細く長い髪がすぐに絡まってしまうから。
それに首にまとわりつく感じが息苦しいから。
何だったら、少し胸元に風が入るくらいのほうが気分が良いくらいだ。


それなのに、、、




ホントにどうかしちゃってんな、、、。



沙織はゆっくりとその丸まった背中に手を伸ばした。



ずるいよな、、、こんなの。



小さくドキドキと鳴る胸は、うるさいのにどこか落ち着いていた。


アンタも、、、私も、、、。



もう少しでその猫のような背中に触れそうになった時、沙織はピタリ手を止めて、そのサラサラの髪の毛に触れた。




「ハッ!!?」


瞬間、驚いて飛び跳ねる荒北。


「ぷっ」
本当に猫みたいだ。
沙織は小さく吹き出した。


「な、ななな何すンだヨッッ!!」

これが猫だったらきっと毛を逆立てているんだろう。

飛び退いて、やたらと距離を取る荒北を見てそう思った。



「髪、跳ねてた」



そう言ってしまったら、もう止めることができなかった。
沙織は荒北の隣にしゃがみ込んで笑った。



「あはは、アンタ驚きすぎっ」


「ア!?何笑ってンだ、テメェコラ!」


「いや、だって、、、荒北、猫みたいっ、、、くく」




堪えようとすればするほど笑えてきて。




「ハァ!?猫だァ??ふざけんなヨ!?ホンットに心臓止まるかと思って、俺は、、、っ!」


「あはは、だって髪跳ねてちょっとハゲてたし、、、っ」


「コラァ!誰がハゲだァ!?」


「ぶふっ!あははは!!」


「テメェコラ!笑いごとじゃねェっつーの!!」





荒北が怒れば怒るほど、愛しく思った。




/ 356ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp