第10章 冬はつとめて
ヤバイ、、、何で私、ちょっと泣きそうなんだ?
、、、一体、私は荒北とどうなりたいんだ?
沙織が鼻の奥から込み上げてきたツンと痛い何かを飲み込もうとしたその時、荒北が口を開いた。
「、、、そんな身体に悪ィもん飲ましちまった罪滅ぼしとかじゃねェんだけどォ、、、その、なんつーか、、、一緒に帰らねェ?」
「、、、!」
思いがけない言葉に目を見開いて荒北を見る。
目の前にいる荒北は頭を掻いて、居心地が悪そうだ。
「っつーか、新開とチビ眼鏡にお前のこと任されちまったしィ、、、」
ただただ茫然とする沙織に言い訳のように話す荒北。
「っつーか、帰る方向も一緒っつーか、同じ寮だしィ、、、」
ドキドキと鳴る心臓は、まるで生き返ったように動いた。
その音を今度は無視することができなかった。
本当に私はどうなりたいんだろう?
あの日、自分から退けておいて。
「、、、まぁ、どうしても一緒に帰りたくねェっつーなら、無理にとは言わねェけどォ、、、」
きっと、、、全部コイツのせいだ。
口は悪いクセに、ホントに急に、突拍子もなく優しくなるコイツの、、、。
最後の方の声が小さくなったのは、自信が無いからなのだろうか。
そんな様子に思わず笑みが零れた。
さっきだって、あんな風に素直にお礼すら言えなくて。
すぐに傷つけてしまうのに。
それでもバツが悪そうにそっぽを向くコイツを、
可愛いと思って笑ってしまったり。
一緒にいたいだなんて思うこういうのを、
どう表現していいのか分からないけど。
「、、、一緒に帰る」
「エッ、、、?」
沙織の言葉に今度は荒北が目を見開く。
「一緒に帰るっつってんだよ!何度も言わせんな、バーカ!」
やっぱり素直な言葉は出てこないけど。
「ンなっ!」
ただただ、今は、、、
少しでも長くコイツといたいって思ってる。
ただ今は、
こんな私でも隣にいてくれようとするコイツの優しさに、
もう少しだけ素直になってみたいって。
そんな風に思うんだ。