第10章 冬はつとめて
戻ってきたら、礼とか言われちまったり?
そしたら「大丈夫か?」なんつって。
そんなことを考えながら過ごした午後。
今か今かと開くのをドキドキしながら待った扉は結局開くことなく、ドキドキは次第に不安に変わっていった。
「アイツの声が聞こえて、元気そうだったし?もう大丈夫だと思ったンだヨ。」
「、、、そうだったのか」
思い出して不安を口にする荒北。
新開はただ静かに聞いていた。
「なのにアイツは何してんだヨ。ったく、心配ばっかかけやがって、早く戻ってこいっつーの、、、!」
ガン
荒北は苛立ちをぶつけるように窓ガラスにその頭をもたげて俯いた。
その直後、
「だってさ、沙織ちゃん?」
ニッコリと新開が笑った。
「ハ!?」
荒北はサッと顔を上げた。
そして新開の視線を追って後ろを振り返ると、佳奈とその後ろには困ったように顔をしかめる沙織が立っていた。
ドクン
その姿を見た瞬間、心臓が痛いくらいに大きく脈打つ。
「おかえり、沙織ちゃん。佳奈」
嬉しそうに目を細める新開。
「えへへ、ただいま」
「おう、、、」
それにまた嬉しそうに答える佳奈と、答えつつ自分から目を逸らした沙織の反応を見て荒北は悟った。
聞かれてたァ!ぜってー聞かれてたァ!!
ど、どこからだ!?
固まる荒北の額にはうっすら汗が滲んだ。
「テメェ、コラ新開。ふざけてんのか!何で教えねェ!」
パッと振り返って小声で新開を責める。
「だって靖友、2人がいるって知ってたらあんな話しなかっただろ?」
しかし新開は何も気にしていない様子で小声で荒北に耳打ちした。