第10章 冬はつとめて
「あー!やっと終わった!」
「疲れたぁー」
「さ、塾行くぞー笑」
「、、、」
終業のチャイムが鳴った途端に騒つく教室。
そんな中で荒北は席に着いたまま動かなかった。
「靖友?どうしたんだ?気分でも悪いのか?」
そんな荒北の肩を新開がポンと叩いた。
「、、、アイツが帰ってきてねェ」
「、、、?アイツって沙織ちゃんのこと?」
「大丈夫だっつってたのに、、、」
「、、、?」
新開は一瞬目を丸くしたが、すぐに頭を抱えながら珍しくボソボソと話す荒北を見て微笑んだ。
「昼休み会わなかったのか?昼飯届けたんだろ?」
「、、、テメェの彼女がうるさかったから、ドアに引っ掛けてきたんだっつーの」
「なんだ。そうだったのか。悪い、佳奈に言ったの俺だ」
苦々しげにボヤいた荒北に再び目を丸くする新開。
「けど、まぁそれなら、今から行けばいいじゃないか」
しかしそれも一瞬のことで、すぐに新開は笑顔で言った。
「ハァ!!?」
荒北は転びそうになりながら聞き返した。
「だって心配なんだろ?」
「そ、それは、、、っ」
「え?」
明らかに狼狽する荒北を、新開は試すように見つめ返した。
その大きな瞳に捉えられて、荒北は気まずそうに目を逸らして呟いた。
「、、、心配っつーか、アイツが大丈夫だっつってたのに戻ってこねェからっ」
「ふーん」
たしかに言ったんだ。
もう大丈夫だって、、、。
試すような新開の視線を避けながら、荒北は昼休みのことを思い返した。