第10章 冬はつとめて
「もう、本当に沙織ちゃんは、、、」
「あは、ごめん。私、真面目だから」
「笑い事じゃないよ!そんなんだったらいつか勉強のしすぎで死んじゃうよ!」
「あはは、まさか」
そう沙織が笑った時、保健室の扉が再び開いた。
「まさかじゃないわよ。本当に気を付けなさい」
「え?」
振り向くと保健の先生が困った顔で立っていた。
「起きたのね」
「あ、はい」
「どれどれ、熱は?ん、もう大丈夫ね」
「先生、もう戻っていいかな?」
沙織は早く戻りたくて仕方なかった。
早く戻って、荒北に、、、。
また気まずい気持ちになる前に。
関係が戻っている確証がほしくて。
「うーん、そうね、、、。戻してあげたいのは山々だけど、今日くらいゆっくり休んだら?あなた相当疲れてるみたいだし」
ね?あなたもそう思うでしょ?
という風に佳奈に目線を送る先生。
「わ、私もそう思う!沙織ちゃん、まだ顔色悪いし、お願いだから今日くらいは、、、」
言いつつまた目を潤ませる佳奈。
それを見て沙織は心底残念そうに溜息を吐いた。
「ハァ、、、わかったよ」
「良かったぁ、、、!」
「佳奈はズルいよなぁ」
「え?何が?」
「そんな顔されたら逆らえないじゃん」
「えぇ?」
嬉しそうに笑う佳奈とは対照的に落ち込む沙織。
「あ。そういえば」
そんな沙織を見て先生は何かを思い出したかのように声を上げた。
「こんなのが保健室にドアにかかってたわよ」
「は?」
不思議そうに首をかしげる沙織に、白いビニール袋を手渡す。
「何だろ?」
「なぁに?」
2人で袋の中を覗くと、そこには、
『香田へ
食え。 アラキタ』
と雑な走り書きと一緒に、ベプシとメロンパン。