第10章 冬はつとめて
「、、、そんなんじゃ、ねェんだけどォ、、、」
「ん?」
否定したものの言葉を濁す荒北を、新開は楽しそうに見つめた。
そんな新開に荒北は大きな溜息を吐いた。
「ダァー!もう、わーった!!白状してやんヨ!話してェんだヨ!!俺だって!!」
「うん?」
それで?と、ニコニコ笑う新開を、荒北は恨めしそうに見てしゃがみ込んだ。
「話してェンだケドォ、、もう、、、どうしていいかわっかんねェんだヨ」
「、、、」
頭を抱えたまま沈黙する荒北。
ポン。
そんな荒北の肩を新開が軽く叩く。
「、、、ア?」
ゆっくりと顔を上げた荒北。
「はぁ〜あ」
その荒北の目の前で新開は大袈裟に溜息を吐いた。
「腹、、、減ったなぁ」
「ハァ?」
人が悩みを打ち明けたってのに腹が減っただァ?
荒北はイラついた。
ニヤリと笑う新開。
「こんなに腹が減ってても俺はすぐに食べに行けるけど、というかまぁここにパワーバーがあるからすぐに食べれるんだけど、、、」
「バァーカ。誰がパワーバー出せって言ったンだヨ」
呆れてそっけないツッコミを入れる荒北。
「けど体調の悪い沙織ちゃんは、好きに食べに行くこともできないのか。病院ならまだしも、学校じゃあ食事が出てくることもないだろうし、、、」
「、、、!!」
「何か持っていってやったら喜ぶかもしれないけど、俺には沙織ちゃんが好きなものとか分からないしな」
荒北は目を見開いた。
そして
ガタン!!
「新開!!アイツらに俺は行けねェって言っとけ!!」
立ち上がった瞬間、後ろにあった机の端に肩を打ったことを気にする暇もなく、荒北は教室から出ていった。
バタバタ!
しかしすぐに戻って、
「サンキュな!!」
とそれだけ言って、駆けていった。
「、、、あぁ、靖友。頑張れよ」
その様子に新開はニッコリと笑うと、その背中に人差し指を向けてポーズを決めたのだった。