第10章 冬はつとめて
「靖友、お疲れさん」
「あーらきた君!メシ!買いに行こうぜ!」
「俺の腹ヤバい、、、もう死にそう。早く、、、」
昼休みになった途端、新開とその仲間達がやってきた。
最近、荒北はこうして新開達と昼休みを過ごすことが多くなっていたのだ。
「、、、そーだナ」
皆が早く早くと教室から出て行こうとしている中、荒北の返事は気のないものだった。
アイツ、、、戻ってこなかったな。
席を立って、教室の反対側にある沙織の机を呆然と見つめる。
授業中もいつ帰ってくるのかと気になって仕方がなかった。
「荒北くん、何してんだよ。早くー」
「先行っちゃうぞー」
お腹を空かせた仲間達が教室を出て行く。
それでも荒北の足はなかなか動かなかった。
そんな荒北の様子に唯一気がついた新開が声をかける。
「靖友?沙織ちゃん、どうだったんだ?」
「、、、あー、さっきはなんだかんだ元気そうだったんだケドな」
「まだキツイのかな。誰かさんのせいで最近、元気なかったしな」
「ブフッ!!ンなっ!!誰かさんって、誰だってンだヨ!!」
図星を突かれて吹き出したくせに、とぼける荒北に新開はその瞳を光らせて微笑んだ。
「さぁ?普段は大きな態度取ってるくせに、いざとなったら怖気付いてる誰かさんかな?」
「ぐ、、、」
「そりゃ辛いよな。何があったかは知らないけど、それまでまぁまぁ仲良かったのに急に避けられるんだもんぁ」
「そ、それはだって、アイツだって俺なんかと話したくねェんじゃって、、、」
「俺なんか?俺は靖友の話なんかしてないけど?」
「ッ!!」
「というか何だそれ。彼女、靖友と話したくないなんて言ったのか?」
「、、、」
い、言われてない、、、ケド。
「それにアイツだってって、、、靖友も彼女と話したくなかったのか?あ、そういうことか。だから最近、、、」
「ッ!!ちげーよ!バァーカ!!」
言いかけた新開を荒北は食い気味に否定した。