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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第10章 冬はつとめて


バタン。



保健室の扉を閉めて、荒北はヨロヨロとすぐ近くの壁にもたれかかった。


「ハァ〜、、、何やってンだヨ」


思わず押さえた額は少し熱い。


俺まで熱が出そうじゃナイ。
ったく、アイツは、、、


「あんな顔しやがって、少しは俺の気持ちも考えろっての、、、」


おそらく熱のせいだろう。
沙織は終始ボーッとしていたし、
突然、泣き出したのだってきっと身体がキツかったせいだ。
最後のだってたぶん。


Tシャツの裾を握られて、上目遣いで見つめられる。
それを好きな女子にされるのが、こんなに破壊力があるなんて思ってもみなかった。



「、、、くっそ、、、ずっりィ」




あの時、沙織の潤んだ目を見て期待した。
もしかしたら、やっぱ好きだとか言われるんじゃないかと。
というか、そうでなくても荒北の方から、もう一度告白したいと思った。
しかし、沙織が言いたかったのはそんなことではなく、ただの礼で。
何とか笑って応えた自分は結構頑張ったと思う。



「律儀っつーか、なんつーか、、、そういう奴って分かってたケド、、、」



やっぱあの物欲しそうな目は、、、ってェ!



「だァー!!バァーカ!熱のせい熱のせい!!熱のせいだっつーの!!!」



ガン!


荒北が額を打った壁の音が廊下に響く。


「、、、イテェ。ハァ、、、っつーか、よく考えたら俺もよくアイツ運んだよな」


冷静になった頭で考えてみると自分の行動はおかしかった。
これまで散々、沙織のことを避けてきたのに。
しかし沙織は、、、


「意外とフツーだったな、、、」



フツーは振った相手に保健室まで運ばれたとか、イヤなもんじゃナイの?
フツー気まずいもんなんじゃナイ?
まぁ、俺もそこまで考える余裕なかったケド。

アイツのことがただ心配っつーか、なんつーか、
ほかの奴に任せるとか、考えられなかった、、、。




「やっぱ、、、まだ好きなんだよナ、、、」



呟いて真っ先に浮かぶのは、体調が悪いなりに楽しそうに笑う沙織の顔で。



久しぶりに笑ったトコ見たな。
また話しかけても笑うかな?



「、、、ハァ、とりあえず、クソババァ呼びにいくか、、、」



まだジリジリと痛む頭をもたげて、荒北は職員室へと向かった。
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