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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第10章 冬はつとめて


沙織はそっぽを向く荒北の顔を窺いながら、意を決して口を開いた。


「えっと、その、アンタが運んでくれたの?」

「あー、、、まあな。その、たまたま近くにいたから、、、」


目は合わさずに荒北が答える。
その答えに沙織は目を瞬いた。
少しずつハッキリしてきた頭で思い出す。


近くにいた?
、、、コートの反対側にいたんじゃなかったっけ?


「ぷっ、、、」


そして沙織は吹き出した。


「ンなッ!何笑ってンだヨ!!テメェ!!」

「いや、なんでも、、、。ぷぷっ、その、ありがとう」

「思っきし笑ってンじゃナァイ!」

「笑ってないって!」

「顔が笑ってンだっつーの!」

「ぷっ!あははは!」

「ホラ!やっぱ笑ってンじゃナァイ!!」

「アンタが笑ってる笑ってるって煩いから、、、これでも私は我慢してやろうと、、、」

「我慢だァ!?やっぱ笑いそうだったんじゃねぇか!」

「だって、、、あはは、アンタが、、、」

言いかけて、沙織は俯いた。

「ア?」



アンタが普通に話してくれるのが嬉しい。
だなんて、、、。


そう言ってしまったら最後、溢れてしまいそうだった。



「ンなッ!?ど、どーしたんだヨ!香田??」

「、、、ッ。もう、、、何で、ここで呼び捨てにするかなぁ、、、」

「はぁ?」

荒北が訝しげな声を出すと、沙織は可笑しそうに微笑んだ。
その瞬間こぼれ落ちた雫に焦る荒北。


「ハ?どうした!?どっか痛いのかヨ!?」

「バァーカ、、、ずっと、、、アンタのせいで痛いんだっつーの」

「は、、、はぁ?」

「アンタが相変わらずバカで安心したら涙が出てきたんだよ」

「意味分かんねェ、何だソレ、、、」


不貞腐れたようにそっぽを向いた荒北に沙織は再び涙を流しながら笑った。


「あはは」

「、、、とにかく大丈夫なんだな?」


呆れたように尋ねる荒北。
沙織はおどけたように答えた。


「たぶん」

「アァ?たぶんって何だ、たぶんって!」
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