• テキストサイズ

隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第10章 冬はつとめて


ピッ、ピッ、、、



次に目を開けた時、沙織は冷たいベッドの上にいた。



ピッ、ピピッ、、、



「何の音、、、?」


忙しく鳴る電子音の方角を見て、沙織は目を瞬いた。


「クッソ!このエアコン全然効かないじゃナァイ!どーなってんだ!アイツが風邪引いたらどうしてくれんだっつの!」


荒北がエアコンのリモコンに向かって毒を吐いていた。


荒北の言う“アイツ”が自分のことだと理解して、沙織は思わず胸を押さえた。



「っつか、あのババァもどこ行ってんだヨ!こんな時ための保健の先公だろーが。ちっくしょ、氷枕もどこにあんのか全然分かんねーし!」



荒北は怒っていた。
沙織が目を覚ましたことにも気がつかない程、必死でエアコンと戦っている。
沙織は静かにその背中に手を伸ばした。


手を伸ばして、その背に触れたら何て言おう。
そんなことに考えが及ぶよりも先に体が動いていた。



今はただ、その背中に触りたい、、、。



そう思った。


自分の為に怒るその背中に、
そっと指先が触れるまであと少しのところで、


「ア゛!」


荒北が飛び跳ねるように振り向いた。


「っ!!」

「な、、、っ!な、何だ起きたのかヨ」

「あ、うん、、、」

「、、、熱は?」

「、、、無いと思う」

「どれ、、、」

言いつつ荒北の手が沙織の額に当たる。
その冷んやりとした温度はボーッとした頭に心地良い。沙織は思わず目を閉じた。


「、、、っ!」


その表情に驚いたのか荒北がパッと身を引いた。


「だ、大丈夫そーだナ!」

「うん、、、」


気まずい沈黙が流れた。


/ 356ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp