第9章 break time④ 文学少女と荒くれ図書委員
「え?そうだったかな?なんか怒ってるみたいじゃなかった?」
「違うよ。あれは荒北先輩の嬉しい顔だよ笑」
「全然わかんない。ってか後ろの人も無理矢理連れてかれてるみたいじゃなかった?」
「、、、んー、どうだろうね。けど、、」
けどたぶん、あの顔は、、、
私は一瞬しか見えなかったけど、荒北先輩の後ろを俯きながら歩く女の人の綺麗な顔を思い出した。
「、、、嫌がってたわけじゃないんじゃないかな」
「その感覚わかんないわー」
「ってか夏子、本当に大丈夫なの?」
「そうよ!なんか平気で話してるけど、、、」
「うん、大丈夫そう。っていうか逆になんかちょっと嬉しくなってきちゃった」
「「はぁ?」」
「だって、あんなドラマチックなとこ見れちゃったし」
「ま、、、まぁ明日の話題にはなりそうだわね」
「ってかそこ〜?笑」
「やっぱり夏子変だわ〜」
「結局恋じゃなかったってこと?」
「へへ、そうかも。ねね、今からちょっと甘いものでも食べに行かない?さっきからお腹空いちゃってて」
「え、いいけど、、、どうせ部活サボっちゃったし」
「結局恋より甘味かよ!ってか夏子は今日はもう図書室いいの?」
「うん、もうすぐ閉まっちゃうし。今日は私もサボる笑」
「お一人様読書部?」
「そうそう、あーあ、初めて部活サボっちゃった」
「あはは、何それ」
「1人しかいないくせに笑」
先輩。
2つだけお願いがあります。
1つ目はこんな私を許してください。
私は結局本よりも先輩のことが好きだったみたいです。
先輩はよく本を読む私のことを褒めてくれていたのに。
私、しばらく図書室には行けなさそうなんです。
今、先輩が受験前で良かった、なんて。
だってこんな私、先輩に見られたくないもの。
あなたに会わなくて済むことに、ちょっとだけホッとし
てる私のことを許してください。