• テキストサイズ

隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第9章 break time④ 文学少女と荒くれ図書委員


い、、、いたらどうしよう。


不安になって後ろを振り向くと物陰に隠れた2人が「ほら!早く!」「会いたいんでしょ!」と口をパクパクさせて手を振り回している。


そ、そうだった。いないと困るんだ。
私は先輩に会いに来たんだ。


っていうか何て言えばいいんだっけ?
えっと、、、奇遇ですね。勉強はどうですか?
そうそう、これこれ。


「よしっ!」

と気合いを入れた時



ガン!


という扉が閉まる音が聞こえた。

驚いて振りかえるとダンダンと大きな足音を響かせながら歩いてくる荒北先輩の姿が見えた。


、、、あ!



瞬間、ドキンと大きく脈打って痛い胸。


私は今嬉しいのだろうか?怖いのだろうか?
廊下の真ん中を偉そうに歩くその姿を見ただけで、涙が出そうになる。
息が苦しくて今にも逃げ出したいのに。


それなのに久々に見るその姿に、自然と綻ぶ私の目が言っている。




私はやっぱりあなたが好き。





少しだけ落ち着いて後ろを振り返ると、2人ともさっきよりも大きく手を振り回してもう何がなんだかよく分からない。
だけど、2人が何を言いたいのかだけははよく分かった。



そうだよね。
私が先輩に言うべきなのは、、、。



私は大きく深呼吸して覚悟を決めた。



「荒北先輩!」


目を瞑りできるだけ大きな声で呼びかけた。

と同時に、キュッ!という音が聞こえた気がして顔を上げると、、、


目の前にいるはずの荒北先輩がいなかった。


「、、、え?」


あれ?あれれれ?
ちょっ、ちょっと荒北先輩、どこに行くんですか?
そっちはさっき出てきた教室ですよ?
あ、あの、え?忘れ物ですか〜っ!?



「、、、」



言いたかった言葉が行き場を失って、喉の奥で暴れまわっている。
混乱しながら振り返ると2人が駆け寄ってきてくれた。


「ちょっとちょっと何?」

「夏子、何したの?」

「いや、私はまだ何も、、、」

「もしかして逃げられたんじゃ」

「えっ!うそ!」


そうだったら本気でヘコむんですけど、、、。







/ 356ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp