第9章 break time④ 文学少女と荒くれ図書委員
「多分それって荒北先輩だよ!」
最近、怖そうな先輩がいて図書室に行きづらい。
そんな相談をした時、私は彼の名前を知った。
「元ヤンですごく怖い人みたいだから近づかないほうがいいよ!」
「うん、、、分かった」
怯えながらそう答えた。
だけどその日はずっと読みたかった本が入荷する日で、
「少しくらいなら大丈夫だよね。関わらきゃいいんだし。早く見つけて家に帰ろう!」
そんな事を考えながら私は本を探した。
チラリと窺うと荒北先輩はずっと貸出受付の机でなにかをしていた。
どうせマンガでも読んでるんだ。
そう思った。
「あ!あった!」
目当ての本はすぐに見つかった。
ウキウキした気持ちでそれを手に取る。
パラパラとめくると新しい紙の匂いがした。
楽しい気分でそのままめくる。
すると、、、真ん中辺りのページが破れていた。
「え、、、」
入荷したばかりなのに酷い、、、。
誰かが乱暴に扱ったのだろうか。
「ア?何それ?」
「えっ!?」
突然聞こえた声に振り向くと、いつの間にそこにいたのだろう。
荒北先輩が不機嫌そうに後ろに立っていた。
も、もしかするとこの人の所業なのでは!
図書委員だったら新しい本を触るだろうし、あ、、、あり得る!!
「あ、あの、えっとこれは、、、」
私何も見ていませんっ!!
怖くて怖くて殺されるんじゃないかと思った。
「ったく、しゃあねーなァ。誰だよ、ンな事した奴」
今にも泣きそうな私には気にもとめず彼はヒョイと本を持ち上げ、貸出受付の席に戻った。
「え、、、?、、、はっ!」
私はその様子を呆然と見ていたけど、その本どうするつもり?まさか捨てるつもりなんじゃ、、、
不安になってその席に駆け寄ると
「あ、、、」
荒北先輩はテープを出して慎重に丁寧にページを直していた。
「、、、」
その表情は相変わらず怒ったようだったけれど、何も言わずただ黙って細く長い指をページに添わす。
綺麗な指だなぁ。
この指の持ち主が元ヤンだなんて、、、
「ぷっ」
想像するとなんだか可笑しくて笑ってしまった。
「ア??なんだよ」
その声に荒北先輩が怒ったように顔を上げる。
ギロリと光る瞳。
「いえっ!なんでもっ!」
や、やっぱり怖すぎる!!