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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第1章 春はあけぼの


沙織はスタッフルームに入るとハァーと、肺の中にあったありったけの空気を吐き出して座りこんだ。

何でアイツらがここにいるんだ?

立ち上がり鏡を覗く。
そこには学校とは違い、軽く化粧をした自分が映っていた。頬と唇に紅をさし、目元に光をさしただけの軽いものだったが、もともとハッキリした顔立ちの沙織は、それだけで十分大人びた。
そして自分の服装を見る。鎖骨が見える胸元、膝が出る丈のタイトスカートを一通り確認して赤面した。
沙織は仕事仲間に学校での姿を見せていないし、クラスメイトにはバイト中の姿を見せたことがなかった。もしかすると、今までクラスメイトも店に来ていたかもしれないが、誰にも気づかれていなかった、と思う。それなのに自分から声をかけてしまうなんて。

なんかアイツには見られたくなかったな、、、。

なぜか沙織は荒北の顔を思い浮かべた。
理由はハッキリしなかったが、小っ恥ずかしくて荒北にまたヒドイことをしてしまった自分にひどく落ち込む。

「沙織」
突然自分の名を呼ぶその声に、沙織はサッと振り向いた。
低く甘い声。いつだってその声に名前を呼ばれただけで沙織の胸は高鳴った。
「君はずいぶん楽しげなお友達を持っているんだね」
その言葉に沙織は慌てた。
「とっ!友達じゃない!!、、、ですけど。うるさくて、ごめんなさい。、、、店長」
沙織は俯いた。
店長と呼ばれた男は沙織の頭を撫で、耳元で囁いた。
「店長なんて、、、2人の時は名前で呼ぶ約束でしょ?」
沙織は頬が熱くなるのを感じた。
「た、、、巧、、、」
「いい子だ」
巧は沙織から離れ、ニッコリと笑った。
「頼みたいことがあるんだ。準備ができたら、出てきて」
そう言ってドアに向かう。
「、、、ところで、今晩は時間ができたんだけど、どうかな?」
その言葉に沙織は一瞬ドキッとし、小さく頷いた。
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