第8章 秋は夕暮れ②
「、、、」
黙り込む荒北。
沙織は意外とフツーに話をしていた。
何だヨ、それ。
「お?荒北どうしたの?忘れ物?」
荒北に気づいた男子が呑気な声を出した。
「チッ!」
「?」
舌打ちをした荒北に気がついて不思議そうな顔をする沙織。
その瞬間、荒北のイライラは頂点に達した。
「なぁ香田!一緒に帰らナァイ!?」
気づけばクラス中に響き渡る声で誘っていた。
「、、、は?」
驚き目を丸くする沙織。
そりゃそうだ。
朝、イメチェンしたのをけなされた奴から、帰り誘われるなんて思わねーよナ。
分かってンよ。それくらい。
俺にだって分かンねーヨ。
何で俺、クラスの奴らの目の前で誘ってンだヨ。
どんだけ一緒に帰りてーんだっつーの。バカかよ。
っつーかそんな俺も俺だがテメェもテメェだろ!
何でそんな何考えてっかよく分かンねー奴らさっさと断ンねーんだヨ!!
「チッ!!」
荒北は舌打ちすると同時に沙織の腕を掴んだ。
「ちょっと、荒北、、、!?」
沙織の戸惑う声か聞こえたがそのまま沙織の身体を引っ張った。
「あっ!香田さん!」
そしてそのまま教室から出ようとした時、我に返ったクラスメイトが沙織を呼んだ。
その声に荒北は更にイラっとした。
「ウッセ!バァーカ!テメェらよりなァ、俺のがずっとコイツと帰りたかったんだっつーの!!」
そして叫んでいた。
ダンダンダン!
「、、、おい」
荒北は黙ったまま沙織の手を引いていた。
心臓の音がうるさい。
それをかき消すように大きな足音で歩いていたからなのか何も耳に入ってこなかった。
気づけば校門を過ぎていた。
「、、、おいってば!」
突然沙織が足を止めた。
それに引っ張られてやっと荒北は我に返った。
「、、、痛いんだけど?」
そう睨まれて荒北は思いっきり手に力を入れていたのに気がついた。
「、、、あ、すまねェ」
気の抜けた声に自分でも戸惑う。
気まずい空気が流れた。
「、、、で?さっきの何?」
そう切り出されて荒北は急に顔が熱くなった。