第8章 秋は夕暮れ②
放課後。
「新開、帰ンぞ」
荒北は朝の不機嫌をまとったまま新開に声をかけた。
「あぁ、靖友。それが今日から一緒に帰れないんだ」
新開は困ったように言ったが、その表情は明るくどこか嬉しそうだ。
「ア?、、、んだヨ、つまんねェ」
「ごめん、靖友」
何かおかしい。
いつもならもっとツッコむところだが、今日はそんな気分にもなれなかった。
「んじゃまた明日ァ」
「あぁ、また明日」
新開に手を振って扉に向かう。
チラリと後ろの席を見ると沙織がクラスメイトに囲まれていた。
「香田さん、一緒に帰らない?」
「いや、俺と!」
「、、、チッ」
手の平を返したようなクラスメイトの態度に荒北は舌打ちをしながら乱暴に扉を閉めた。
ダンダン、、、
大きな足音を立てながら廊下の真ん中を歩く。
「香田さん、一緒に帰らない?」
頭に浮かぶのは帰るのを誘われていた沙織の後ろ姿で。
なぜかイライラして仕方なかった。
一緒に帰らない?ハ?
バッカじゃねーの?
アイツがそんなんで帰るワケねーだろーが。
、、、帰るワケ、、、
キュッ!
廊下に上履きの擦れる音が響いた。
「チッ!!」
クッソ、何でまた教室に戻ってンだヨ!俺ェ!
アイツがあんな奴らと一緒に帰るワケないじゃナァイ!!
アイツのことだ。
きっと可愛気なく「ハァ?誰が帰るかよ、キモ」とか言って、相手凹ましてる姿がフツーに思い浮かぶのに、、、。
いや、ケド一応アイツは振られたばっかだし?
もしかしたら傷心に漬け込んでとか?
今まで友達なんかいねェ奴だし?
何か嬉しくなって誘いに乗っちゃうこととかもある?
とか考えてンじゃねーよ!バァーカ!
ンなことあるワケないじゃナァイ!
っつーか、ちょっと忘れ物した気がするだけだし。
だからこんな落ち着かないだけだしィ。
別にアイツが心配とかそんなんじゃ、、、
ガラッ!
勢いよく自分の席とは反対側の扉を開けた。
するとさっきと変わらず男子たちに囲まれている沙織がいた。