第8章 秋は夕暮れ②
「え?なになに?」
「あれって香田さん??」
「え!マジ!?」
「どうしたの?ってか、、、可愛い」
「よっ!荒北!新開!」
そんな教室の騒めきにも我関せずズイズイと仏頂面のまま後ろの席までやって来ると沙織はニカッと笑った。その表情や声、仕草から目の前にいるのは沙織に違いないことだけは分かった。
一呼吸置いて新開はにこやかに返事をした。
「おはよ!沙織ちゃん。すごく変わったね。誰かと思った。どうしたの?急に」
「、、、」
「ちょっと色々な!まぁ、受験も近いし、落ち着けてもいいかなって。変かな?」
沙織は髪の話題になった途端に視線が泳ぎ少し恥ずかしそうな素振りを見せた。
そんな沙織に新開は爽やかに言った。
「変じゃないさ!すごく似合ってる。綺麗だよ。な?靖友」
「、、、ハ!?」
呆気にとられている荒北に新開がパスを出す。
荒北はまさか飛んでくるとは思わなかった振りに変な声が出た。
え?えっとこういう時は何て言やァイイんだ?
っつか、新開コラ、ウィンクしてんじゃねェ!
全然ナイスじゃねんだヨ!
キラーパスだっつの!!
何か言おうと考えれば考えるほど、口はパクパク動くだけで声が出ない。
チラリと前を見ると沙織と目が合った。
沙織が動くのに合わせて落ち着いた茶色のその髪は細く柔らかに揺れて、
「、、、ッ!」
クッソ!触りてェエ!!
、、、っつか、これってチャンスじゃナァイ!!
アイツに意識させてやるぐらいカッコ良く、爽やかに自然に褒めンだヨ!
オラ!言えよ!俺ェ!!
荒北は大きく息を吸い、口を開いた。
「ハッ!フツーだなァオイ!テメェから金髪取ったら何も残らないんじゃねーの?あ!!そのデケェ態度とバカ力があったか!!」
「、、、、」
言い終わってハッと我に返って気づく。
目の前の青い顔をした新開と、真っ赤な顔をした
沙織に。
しまった、、、!
そう思うと同時に
「死ね!!ブス!!」
頬に鈍い痛みが走った。