第8章 秋は夕暮れ②
翌日。
「ハァ、、、」
荒北は席に着くなり窓の外を眺めて溜息をついた。
「おはよ、靖友!何だ?朝から溜息なんかついて。幸せが逃げていくぜ?」
ガタンと荒北の前の席に座って得意のバキュンポーズを決める新開に、つっこむ気にもなれない。
「新開か、、、朝からウッゼーなァ。放っとけ、俺は幸せなんかどーでもいいんだヨ」
そう言ってうなだれる荒北の頭の中は昨日のことでいっぱいだった。
「隣にいてよ?」
そう言った沙織の声が何度も何度も頭の中を巡って、
、、、正直、、、嬉しかったよナ。
思い出す度に少しだけ緩む頬。
ただ、、、
ネタとしてって何だヨ!
一晩寝てもやっぱ納得いかねーヨ!
なんつーか、俺、報われなさすぎじゃナイ?
そう思うと地面に沈みそうなくらい落ち込んだ。かと言って、
あの状況で告白??
、、、、。
いやいやいやッ!それはねェ!!
それは、、、
もしも、告ってたらどうなってた?
もしも、、、って
ダァー!!
っつーか終わったことをウジウジ考えてンじゃねーヨ、俺!!
もしもとか考えたって奴にとって俺はネタなんだヨ!
それでいいって言ったじゃナァイ!!!
、、、、、
「ハァ〜」
そうやってちょっとだけ浮ついた気持ちになった後、急に頭を掻きむしり、最後には溜息をついてはうなだれる。
今朝起きてからというもの荒北はこの繰り返しであった。
「、、、?」
目の前でその様子を興味深げに眺める新開はニコニコと幸せそうだ。
「っつーか、テメェはなんか機嫌がイイじゃナァイ、、、」
そう恨めしそうに言った荒北の言葉にパッと明るくなる新開の顔。
「そうなんだ!実は、、、」
新開が言いかけた時、突然教室が騒ついた。
「ん?何だ、、、?」
「ア、、、?」
2人同時に騒がしい方へ目をやった。
そして
「え、、、!」
「ア゛!?」
2人同時に目を見開いた。
その先には、艶々と美しく輝く茶髪をかきあげる沙織がいた。