• テキストサイズ

隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第8章 秋は夕暮れ②


「、、、」



「大切にしてた。彼女に傷をつけないように。彼女がいつだって引き返すことができるように」




荒北はただ静かに巧の話を聞いていた。



「だけど大切にしすぎて彼女に頑張れなんて言えなかった。学校のことも水泳のことも、、、あの子が悲しむくらいなら忘れさせてあげたかった」



そして巧は寂しそうに笑った。



「でも、そうじゃなかった。沙織は君と出会って変わった。水泳のために大学に行きたいと言いだしたり、クラスメイトと仲良く話したり、、、僕には、したくてもできなかったことだ。、、、いや、本当はそんなことしたくもなかったのかもしれない。このままずっと僕の側に、ただ今まで通りいてほしかった。」




そんなの、自分勝手だろ?




巧は自嘲気味に笑って俯いた。










「、、、だから?」



その頭に荒北は冷たく言い放った。



「え?」



巧は目を丸くして顔を上げた。
荒北はイライラしたように溜息をついた。



「だから俺にアイツを譲ろうってことかよ?ハッ!バァーカ!!」



「バ、、、?」




荒北は握った拳に力を込めた。
巧は痛みで顔をしかめた。




「好きな奴がテメェの元から離れてく、そんなの誰だって嫌だろーが!それをチマチマチマチマ。ウッゼーんだよ!」




「ウッゼー、、、?」




「そんなモン全部獲っちゃえばイイじゃナァイ!!奪えヨ、全力で!年上だからァ?アイツの為だからァ?ハ!!笑わせんな!結局、テメェの気持ちぶつけンのが怖いだけじゃナァイ!!」




巧はあっけにとられていた。



「そんなんだからアイツの気持ちにも気づけねーんだヨ!バァーカ!!」




荒北の瞳が鈍く光り、不敵な笑みが浮かんだ。




「、、、テメェがそんなんだったらな、俺がマジで獲りに行っちゃうゼ?」




その笑みに巧は思わず生唾を飲んだ。






/ 356ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp