第8章 秋は夕暮れ②
『えぇ!明後日!!?明後日とかもう間に合わないじゃない!勉強、、、してるよね!?』
『えっと、、、中間よりは?』
『何それ!もっと頑張ってよ!じゃないと、またあの怖いお兄さん来るの!?』
『来る、、、かも。』
『ひぇー。もう香田さんに似てすごい怖いし!何あれ、僕、一応年上だったよね!?』
『はは、昔からあんななんですよ。ってか私に似てって何なんすか』
『いやーホント怖かったー』
『、、、でも、庇ってくれた』
彼女の目は見ることができなかった。
『、、、そうじゃない。僕は、ただ、、、』
僕の店を否定されたような気がして、、、。
それだけだ、、、
『、、、、それでも、嬉しかった』
彼女が近づいてくる気配がした。
『上司としてって、本当にそれだけ、、、?』
彼女が僕の顔を覗き込んだ。
彼女の泣きはらした瞳から、目を逸らすことはできなかった。
『私は違う。店長のことが、好き、、、』
たぶん彼女は気づいていない。
その気持ちは、そうじゃない。
何も知らない子猫が、初めて見た人間に付いていくような。
不安を拭うためだけの
温かかさを求めるためだけの気持ちだってことに。
そして僕のこの気持ちもきっと。
だってそうだろ?
普通に考えておかしいじゃないか。
20歳にもならない少女が、僕みたいなオジさんを好きになるなんて。
僕だって、自分の年齢の半分しか生きていない彼女を好きになるなんて。
それなのに。
僕は彼女を抱きしめた。
この気持ちは何だろう。
ずっとこうしてみたかった。
これまで感じたことがないくらい温かくて、いい匂いがした。
つい、溜息が出た。
だけどこれは違うんだ。
きっと違う。
ただ、
今だけ、それで君の傷が少しでも癒えるのならば。
いつか君が本当の気持ちに気がついたら、その時は喜んで身を引こう。
それが大人の務めだろ?笑
それまではただ君にこれ以上傷がつかないように。
悲しいことなんて全部忘れて。
ただこの腕の中で大切に大切にするから。