第8章 秋は夕暮れ②
ただ僕がそれ以上彼女に関わることは躊躇われた。
少しずつ、彼女との距離が近づいているのに気づいていたから。
そして彼女の思いにも。
だけどずっと気づかないフリをしていた。
僕はただ、彼女がこれ以上悪くならないように、少しずつ本当の自分を取り戻せるように、近くもなく遠くもない場所から彼女を見守っているつもりだった。
だって、彼女はまだ子供だ。
正直、おかしいだろ?笑
だけど、ある日。
沙織がバイトに来なかった。
文句を言いつつ、遅刻もしたことがなかったのに。
僕は店長として彼女に連絡をした。
携帯の呼び出し音が鳴るたびに心臓が変な音を立てた。
彼女が出たらどうしよう?
なんて、本気で考えてた。
40近い大の大人が、、、気持ち悪いよな。
そんな僕の心配をよそに彼女は電話に出なかった。
ため息が出た。
ホッとしたのか、していないのかよく分からなかった。
『ちょっと出てくる』
『え!店長?どこに行くんですか』
『あの子が電話に出ない。ちょっとその辺見てくる』
『香田さん?そういえば無断で欠勤したりするような子じゃないのに、、、って、あ!店長!!』
どうしてだか分からなかった。
彼女が電話に出ればそれはそれで困るのに、心臓の嫌な音は止むことはなくて、気がついたら店を飛び出していた。
そして彼女を見つけた。
というよりも彼女はそこにいた。
店の裏手で1人うずくまっていた。
『香田さん?』
『、、、』
『どうしたの?』
『別に』
『別にじゃないでしょ?連絡もしないでこんな所で、
、、何で入らない、、、』
彼女の顔を見て気がついた。
『ヒドイ顔だな、、、』
思わず、口をついた。
彼女の顔がみるみる赤くなった。