第8章 秋は夕暮れ②
『ハァ!?聞いてないんだけどっ!』
『え?そのままなのは髪の色って言ったよね?』
『言った!けど、学校に行くなんて言ってない!!』
『学校に行かなくてもいいなんてことも言ってないけど?』
『はぁ!?余った時間で金稼げって言ったじゃん!』
『学校をサボって作った時間なんてことは言ってない。せいぜい学校で頑張るつもりがないなら、放課後勉強をしなくていいんだから、その時間でって意味だったんだけど、、、とにかく、学校をサボって働かせるなんてできない。僕がお巡りさんに怒られるじゃない』
『ふっざけんな!そんなのやってられるか!こんな店!もう辞めてやる!』
『そんなこと言ったって、もう契約書にサインももらったし、君用の制服だって、ほら。名前の刺繍入りだよ?お金かかってんだけどなぁ、、、』
『知るかっ!んなもん!!』
『じゃあ、こうしない?僕に腕相撲に勝ったら辞めていいよ。制服代だっていらない。その代わり、僕が勝ったら君はちゃんと学校に行って、放課後はこの店で働く。どう?腕相撲、僕に勝ったら君の好きにしていいからさ』
『はぁ!?腕相撲!?何で私がそんなこと、、、』
『あれ〜?もしかして自信ない?』
『んなわけあるかボケ!余裕だよ!!』
『じゃあほら、早く!腕出して!』
『分かったよ!さっさと勝ってこんな店辞めてやる!』
『いいよ。僕に勝ったら君の好きなようにしたらいい』
巧はまた思い出して笑った。
「君たちは本当にそっくりだ」
「 ヘェ、、、!」
テメェの得意分野だって知ってりゃ、こんな勝負受けなかったんだけどナァ!!
荒北は憎々しげに巧を見て不敵な笑顔を作った。
「んで?オッサン、俺はアイツとの思い出話を聞きに来たンじゃねーんだけどォ?」
「あぁ、そうだったね。つい君を見ていると沙織のコトを思い出してしまう」
本当に、、、悔しいくらい似てるんだ。
巧は困ったように笑って言った。
「そのうちに、少しずつ彼女も店に馴染んできていた。ちゃんと学校にも行って、笑顔も見せるようになって、、、」