第8章 秋は夕暮れ②
「今思うと、その時から多分、、、」
巧は微笑みながら俯いた。
荒北は隙あらば巧の腕を倒そうと力を入れたが、巧の腕はほとんど動かなかった。
こンの、、、たぬきジジイ!
荒北は顔を歪めた。
「彼女が学校に行けていないことを聞いた時、自分でもどうしてだか分からないけれど、すぐにこの店のバイトに誘った」
『ハァ!?何で私が!!』
『学校に行ってないなら時間あるでしょ?』
『そういうことじゃねーんだよ!私がいつこの店で働きたいって言ったんだよ!』
『うーん、、、けどさ、今日の飲み物代とその君が着ているクリーニング代はどうするつもりなの?』
『はぁ?飲み物代とクリーニング?』
『それもタダじゃないんだけど?』
『ふっざけんな!そんな話聞いて、、、』
『まぁ、お金の話もあるけどさ、悪い話じゃないと思うよ?君は余った時間でお金を稼げる。そのお金で好きなことをしたらいい』
『、、、』
『もしかして、そんな見た目で毎月ママにお小遣いをもらってるから大丈夫、とか言うの?』
『違うわ!ボケ!!そこまで言うならやってやるよ!その代わり、髪色は変えないからな!』
『あぁ、髪色はそのままでいいよ。うちはチェーン店でもないし』
巧は可笑しそうに笑った。
「ぷっ!今思うと僕もずるいんだけど、、、あの子は最初から分かりやすい性格で、、、そんな所が良かったのかな?悪い子じゃないって思った。それで次の日からバイトに来てもらった」