第8章 秋は夕暮れ②
『、、、上手いこと言って中に連れ込んで、おかしなことでもする気なんじゃねーの?』
ほら。すごく怖い顔で睨んでる。
『それは大丈夫。僕はもっと大人の女性が好みだから』
なんて言って誤魔化したけど、
内心、結構ヒヤヒヤしてた。
あーこれ捕まるかも。なんて笑
『ハッ!たぬきジジイが』
『それはどーも。それはそうと、たぬきって結構かわいいよね』
『はぁ?バカじゃねーの?』
『そうかもね。君みたいな汚れた野良猫を大事な店に入れようっていうんだから、大バカ者だよ』
そう、彼女は野良猫。
今にも噛みつきそうだったけど、ずぶ濡れで汚れた野良猫があまりに可哀想で、僕は僕の良心を守るために少しだけ面倒を見るだけだ。
自分で飼う気なんてさらさらない。
、、、だから、大丈夫。
『死ね、クソジジイ』
毒を吐きながら少しだけ笑った彼女の横顔が子供みたいに無邪気なのに、どこか色っぽくて僕はすぐに目を逸らした。
こんな子を少しでも綺麗だと思うなんて、本当にバカになったんじゃないかと思った。