第8章 秋は夕暮れ②
「ハァ!?何でそうなんだヨ!!」
巧の目とその言葉に戸惑いつつも荒北は言い返した。
俺が、、、喜ぶ!?
「え?だって君は香田さんの事が好きなんだよね?」
「、、、ッ!」
荒北は目を見開いた。
「あれ?昨日の負けないっていうのはそういうことだと思ったんだけど。違った?」
巧の瞳が荒北を捉える。
その瞳は微かに笑みを孕み、戸惑う荒北を面白がっているようだった。
「ぐ、、、っ」
荒北は一瞬緩みかけた手にもう一度力を込めて、巧の瞳を睨み返した。
「違わねェ、、。」
荒北は声を絞り出すようにして答えた。
その言葉に巧は嬉しそうに目を細めた。
その顔に荒北の心臓が騒つく。
そーだヨ、、、。
テメェの言う通りだ。
俺は、アイツのことが好きだ。
「だったら喜べばいいじゃないか。もうあの子はフリーだよ」
あぁ、喜べばいい。
そんで弱ってるアイツにつけ込んだり?
ハッ!悔しいが泣いてるアイツを見て、そんなことが頭をよぎらなかったって言やァ、それは嘘だ。
だけど。
荒北の頭の中にケラケラと笑う沙織が浮かんだ。
「ウッセ!バァーカ!!ンなことはなァ、テメェ言われなくても分かってンだよ!!ケドな、、、」
荒北は笑った。
俺は、バカみてぇに笑ってるアイツが
1番好きなんだヨ。
「イライラすンだヨ、、、見え見えなンだヨ、、、!オッサン、テメェ、まだアイツのこと好きじゃナァイ!!!」
巧の顔から笑顔が消えた。
それを見た荒北の瞳が不敵に光る。
「ハッ!否定しないのォ?!」
巧は黙って荒北を見ていた。