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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第1章 春はあけぼの


それからしばらく経った放課後、荒北は佳奈と再び本の修理をしていた。
あの後、佳奈は翌日こそ学校を休んでいたが、その次の日から登校した。
荒北は修理した本を片付ける佳奈の横顔をチラリと見た。

だいぶ目立たなくなったナ。

顔の傷はアザになり痛々しかったが、今ではかなり良くなってきていた。それでも荒北はその顔を見るたびに、居たたまれない気持ちになる。

「オイ!見とれてねーで、真面目に働け!」

慌てて目をそらし、正面を睨む。そこには不機嫌そうな沙織がいた。
「うっるせーな!見とれてねェ!っつーか、何でテメェがいンだヨ!!」
「ハァ!?佳奈が今日は委員会だっていうから、バイト休んで待ってんだよ!話聞いてなかったのかぁ?」
「そうじゃねェ!何で俺らが作業してる机でテメェは漫画読んでるんだっつー話だヨ!気が散るンだろーが!あっち行け!」
「図書室のどこで本読もうと私の勝手だろ?それにテメェは佳奈ばっかり見やがって、私がいなくても気が散りまくりだろーが!」
「だから見てねーつってんだろ!!」
「あ!あのっ、2人とも静かに、、、っ!!」
言い合いを始めた2人を止めようとした佳奈が、脚立から足を踏み外した。
「佳奈!?」
「あのバカッ!」
荒北は足を踏み込んだ。

クソがっ!間に合わねェっ!

佳奈が落ちていくのが、やたらゆっくりと見えているのに、手が届かない。
佳奈は覚悟し、目を閉じた。

落ちる、、、
、、、え?

ふわっ

しかし落ちたのは冷たい床ではなかった。

あれ?温かい?

ギュッと閉じていた目を恐る恐る開けると、目の前には笑顔の新開がいた。
「大丈夫?岩元さん」
「あ、、、新開くん。って、ひゃあ!」
佳奈は新開の腕の中にいた。触れる腕は制服ごしにも逞しいのが分かる。
新開は佳奈が無事なのを確認して、ゆっくりと床に下ろした。
「あ、あの、ありがとう」
「気にしなさんな。それより、靖友!ちゃんと見とかないとダメだろ?」
「うっせー!ってか、お前どこから現れたんだァ?」
「今日は部活が休みだから、勉強してたのさ。そしたら、おめさん達の大声が聞こえてきて、覗いてみたら岩元さんの足元がおぼつかないから心配で」
そう言い新開は佳奈に笑いかけた。
そして佳奈は顔を赤らめている。
その様子を見て、荒北は舌打ちをした。

チッ!
俺、クソダセー、、、
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