第8章 秋は夕暮れ②
だから。
もう痛いほどに分かったから。
「えっと、、、エロ?」
巧は少し困った風に荒北に聞き返した。
「ごめんね、何か勘違いをさせてしまってるかもしれないね。」
もう少しだけ。
「ハァ?何が勘違いだって、、、」
荒北が言い返そうとするのを巧はスッと遮った。
そして
「はは、何が勘違いかは教えてあげない」
とニヤリと笑った。
「アァン!?テメェ、ふざけんじゃねェぞ!!」
案の定、荒北がまた怒る。
「ごめんね。僕はそこまで優しくないんだ」
そして怒る荒北に向かってまたニッコリと笑うのだった。
「こんなオジサンにもプライドがあるからね」
もう少しだけ格好をつけさせて。
「テメェ、コラ!!いい加減に、、、」
巧は荒北が怒鳴りかけたのもスルーして、
「あと、僕は巧。テメェじゃないよ。それじゃ、明日沙織によろしくね」
カラン。
巧は店の中に入った。
荒北くん。
明日からも学校で沙織のことをよろしくね。
背中に当たる扉の感触がやけに固く冷たく感じた。
気を取り直して顔を上げると出勤してきた沙織が荒北と居たメンバーと喋っていた。
楽しそうに話す、その背中に声をかけた。
「やぁ、香田さん。ご苦労さま。少し話があるんだけど、バックに来てもらえる?」
「え、、、?あ、はい。それじゃな、新開!」
「うん、バイト頑張って。」
新開と呼ばれた赤茶色の髪をした男の子がにこやかに手を振った。
沙織も手を振り返す。
巧はそれを見て少しだけ寂しそうに微笑んだ。