第1章 春はあけぼの
沙織は呆然と荒北を見た。
「アン?何だよ。」
荒北が睨む。
誰も気にしてない。
その言葉が沙織の頭の中を何度も駆け巡った。
沙織は荒北にバレないように少し笑った。
「アンタが鈍感なだけなんじゃないの?」
「ハァ?俺のどこが鈍感だよ!実際なァ、俺は黒髪だが、皆から嫌われてんだ。だから髪色なんて全っ然カンケーねぇんだよ!」
沙織は荒北の口から出た、自分は嫌われてるという言葉に素直に納得した。
「たしかに。」
「ハァ!?テメェ、ほぼ初対面で何がたしかにだヨ!フツーそこは否定しとくもんだろーが!」
「ぷっ!」
沙織は吹き出した。
「アンタ、フツーとか気にするんだ。ってか、その言い方嫌われてること否定してほしいみたい!え!!そうなの?」
「ウッセ!!そんなことねーし!別に俺は1人でも何も気にしてねーし!」
「ムキになるところがまた怪しい」
「テメェ、コラ!そもそもテメェがちょっと落ち込んでる風だったから、こっちは気ィ使って励ましてやってンだろーが!しかもテメェ、謝りに来て何だその態度!」
励まして、くれてたのか。
「そういえばそうだった。忘れてたわ。はい、ベプシ!」
目の前のベプシを荒北に渡す。
「お、サンキュー。気がきくじゃナァイ。ってか、忘れてただァ?ぜってー許さねー。ってか何でベプシなんだヨ」
「新開ってヤツがアンタがベプシ好きだって教えてくれた」
「あンのヤロー。他人の情報をペラペラと、、、」
プシッ。
言いつつ、渡されたベプシを飲む。
「うわっ!ぬるっ!まずっ!」
そういえば、、、
「あー、ごめん。ずっと握ってたし、その後、そこの日向に置いてたからだわ、、、ぷっ!ははは」
「テメェー!マジで許さねー!」
屋上には沙織の笑い声が響き、暖かい春の風が吹いていた。
その風になびいて沙織の髪はキラキラと輝いた。
何だコイツ、、、変な奴。
ケド。なんつーかコイツの匂いは、、、悪くねーな
荒北は目の前で笑う沙織を見てそう思った。