第1章 春はあけぼの
「えと、昨日のことを謝りたくて、、、」
沙織は荒北から目を逸らした。
はぁ、ダメだ。言葉が出てこない、、、
「アァ?昨日のこと?何だそれ?」
荒北は怪訝そうに眉をひそめた。
コイツ、、、あくまで無視を決め込む気か、、、。
私の態度がまだまだだってことだな、、よし!
沙織はマスクを外し、屋上のコンクリートに額をつけた。
「昨日は、佳奈を助けてくれたのにあんなことして本当にごめん!!知らなかったとはいえ、酷かったと思う。
もう私のことは許さなくてもいい!けど、佳奈は、、、アイツはアンタのことを気に入ってるみたいなんだ!だからこれからも仲良くしてやってほしい!私は二度とアンタには近づかないと誓う。だから、、、」
沙織は恐る恐る顔を上げた。
荒北と目が合う。その途端、荒北が突然立ち上がった。
「あー!!テメェ!まさか、昨日のタックル女かァ!?」
荒北は沙織を指差して叫んだ。
「は?」
荒北は本気で驚いている。
もしかしてコイツ、、、私のことマジで分かってなかったのか?
マスクしてたからか?
「い、、、いやいや!いくらマスクしてたとしてもだろ!こんな金髪なかなかいないだろ!?フツー朝見た時点で気づくだろ!バカなの!?アホなの!?」
「アァン!?バカだァ!?っざけんな!そんな金髪、今どき珍しくもなんともねーだろが!!」
は?
金髪が珍しくないだって?
「いやいや、珍しいだろ!だから皆避けてる!だから嫌われて、、、」
「ハァ!?テメェはバカか?」
荒北は沙織の言葉を遮った。
「テメェが嫌われてンのはその髪のせいじゃねェ!全部髪のせいだと思ってンなよ、この甘チャンが!福チャンは金髪だが、皆からソンケーされてンだ!何でも他人のせいにしてんじゃねーよ!誰もテメェの髪なんて気にしてねェっつーの!そんなしょーもねェこと気にする前にまずはあのタックルをどーにかしろヨ!ボケナスがァ!」