第8章 秋は夕暮れ②
コイツ、、、!あの時の!!
荒北の頭の中で、あの時の光景が蘇る。
荒北は腹の奥で何かが疼くのを感じた。
目の前の男は幸せそうにニコニコと微笑んでいた。
その穏やかな顔を見て、荒北は無性に腹が立った。
何だ、このオッサン。
何笑ってんだヨ。
そんなにこの俺が可笑しいかヨ、、、!
「だったら何だって、、、!!」
「そうですが。うちの荒北が何かしましたか?」
怒鳴りかけた荒北をすぐさま制止して福富が返事をした。
、、、クッソ!福チャンめ!
、、、あーまぁそうだヨ。
コイツに怒鳴り散らしたって何も変わんねェ。
、、、そんなこと分かってる。
わかってンだよ。
つーか!何で俺が何かやらかした体なんだヨ!!
ってオイ!東堂!テメェ、溜息とか吐いてコッチ睨んでンじゃねェヨ!
俺はまだ何もしてねェっつーの!!
、、、まァ、あのままだったらこのオッサンに掴みかかってたかもだケド、、、。
「あ、、、いやぁ、うちのバイトが仲良くしてもらってるみたいだからお礼を言いたくて、、、」
店員は照れ臭そうに頭をかいてそう言うと、スッと姿勢を正して真正面から荒北を見た。
その瞳はキラキラと輝いて荒北は思わず見惚れ固まった。
「うちの沙織がいつもお世話になっています」
そして笑顔で荒北に礼を言った。
先程荒北が怒りかけたことなど何も気づいていないような、どこか子供っぽい笑顔。
なのにその笑顔は荒北が色気を感じるほどカッコよかった。
「おぉ!こちらのバイトというのは、あの金髪の娘か!!この間、俺たちも勉強を教えてもらったのだ。」
「こちらこそお世話になっています」
男の話を聞いて東堂と新開も顔を緩めた。
「フン!」
しかし我に返った荒北は他の3人に反発するようにそっぽを向いた。
ハァ!!?
“うちの沙織”ダァ?
ふざけんな!何様のつもりだっつーの!
、、、あ、、、彼氏様か。
ってバァカ!俺!!何自分を凹ましてンだヨ!!
、、、ケド、アイツもなかなかイイ好みしてンじゃナイ。
フツーにカッコよくて人当たりがいい大人の男。
、、、ブサイクで愛想のねェ俺とは正反対。
荒北は3人と和やかに話すその男をチラリと見て、バレないように溜息を吐いた。