第8章 秋は夕暮れ②
薄汚ェ小窓から見えたアイツは、照れたように、だけど嬉しそうに笑っていた。
その顔は何つーか穏やかで、優しげで。
俺の知らないアイツは胸が締め付けられるくらい綺麗で、幸せそうだった。
それを見た瞬間、すぐに分かった。
何もかも。
インターハイの日、あんな綺麗な格好をしてたのも俺の為なんかじゃねェし。
俺を受け止めてくれたのも、親切心とかそういうので、それ以上のものなんてなかったし。
泣いてたのも多分よっぽど俺が辛そうに見えたんだろーな。
アキちゃんが怒ってるって泣きそうな顔してたのも。
嬉しそうに不味くなったベプシ飲んで笑ってたのも。
今日、俺のことカッコ良かったって言ったのも。
ぜーんぶ俺の勘違い。
そーいや、アキちゃんの時だって、これからも友達でいたいとかなんとか言ってたよな?
アイツにとって俺はただの友達。
一生、、、友達だ。
なぁ、テメェもそんな顔ができたんだな。
そりゃそうか。
彼氏だもんな。
友達の俺にそんな顔は見せねェよな。
あー、ダッセ。
「あの、荒北くん、、、」
チビ眼鏡の声で我に返る。
俺はパッとドアノブから手を離して、振り向いた。
チビ眼鏡が心配そうに俺を見上げていた。
「あー、、、今日はやめといた方がいいんじゃナイ?急ぎじゃねェんだろ?」
チビ眼鏡の視線が痛くて、俺はすぐに目を逸らした。
「あ、うん、急ぎじゃないけど、、、」
「じゃ、テメェもさっさと帰れ。またすぐに暗くなっちまうぞ」
「あ、うん、、、」
すまねェな、チビ眼鏡。
ズカズカ入ってって、テメェの用事を終わらせてやりたかったんだケド、
今の俺にはできねェわ。