第8章 秋は夕暮れ②
俺がそれを知ったのは、ちょうど1ヶ月前。
あの日、席は離れちまったけど、それでも俺たちの距離は確実に近づいた気がして、浮かれた俺は部活帰りにチャリを飛ばして駅前に向かった。
用事?んなもん無かったケド、、、何となくアイツの働いてる姿が見たくなって。
っつーか、もしかすっと運良くこっちに気がついたりして、少し話せるんじゃないか、、、なんつって。
とにかく俺は期待して。
浮かれてて。
だから奴の店の裏口前でウロチョロしてるチビ眼鏡を見つけた時も珍しく機嫌よく話しかけたんだ。
「お!チビ眼鏡じゃねーの!久しぶりじゃナァイ!」
「あわっ!?」
あわ?相変わらずコイツは、、、どんな驚き方だっつーの笑
「あ、荒北くん!久しぶりだねぇ。インターハイ以来かな?」
「そーだな。っつか、こんな所で何してんだヨ。お前、だいぶ怪しいぜ?」
「あ!えっと、、、その、ちょっと沙織ちゃんに用事があって、、、」
この時、チビ眼鏡の歯切れの悪さに気がつくべきだったんだ。
だけど俺は浮かれてて。
「ンなもん、ちょっと声かけりゃいいだろうが」
ついでにチョット話せるんじゃないか
そんなことを思っちまって、
チビ眼鏡の手を引いて裏口に向かった。
「あ!ちょっと!荒北くん、待って、、、」
そんな声も聞こえなくて。
ドアノブに手をかけて中を覗いた時に
見ちまった。
綺麗に化粧した顔で笑うアイツと、
その隣に座って頭を撫でる男の姿を。