第7章 break time③
「あ、あの、また来年も練習に付き合ってもらえますか?」
制服に着替えてから、ジャージを羽織ってタオルで髪を拭く彼女に声をかけた。
この人は着替えないのだろうか?
それにどうしてだろう、彼女が現れてからアンディとフランクがずっと細かく痙攣している。
「あー、どうかな。ま、どうしてもって言うならまた来るけど」
彼女はそう言って満更でもないような顔をした。
「ありがとうございます!」
また彼女に会える。
それが嬉しかった。
「あの、今日は本当にありがとうございました!僕、1人だったら諦めていたかもしれません、、、」
顔を上げると彼女は一瞬キョトンとしていたけれど、すぐに目を細めた。
「いいよ。私も1人だったら逃げ出してたかもしれないし、アンタがいてくれて良かったよ」
「え、、、?」
それは、どういう意味だろう?
「あの、、、」
彼女の言葉の意味を聞こうとした時、
キーンコーン
カーンコーン
チャイムが鳴った。
「あ、そろそろ1限目が始まるな。早く行けよ」
「は、はい!えっと、、、」
彼女は行かないのだろうか?
「私はここにいるよ、それじゃな」
「あ、はい、それでは、、、」
彼女に促されるままに教室へ向かう。
プールの扉を閉める間際、振り返ると
スタート台に座ってにこやかに手を振る姿が見えた。
やっぱりこの人は
お伽話に出てくる人魚みたいだ。
一瞬そんなことを考えたが、すぐに水泳の授業に向かう生徒の波に飲み込まれて、僕も教室へと急いだ。
途中、彼女の名前を聞き忘れたことを思い出した。
そして僕も名乗っていなかったことも。
しかし同じ学校なのだから、きっとまた会える。
それはその時でもいいか。
その時はもっと色んな話を、、、。
そんな期待に胸を躍らせて、僕は小走りで教室へと向かった。