第6章 秋は夕暮れ①
コイツ、、、マジで何なんだよ。
荒北は頭の中で考えを巡らせた。
さっきの泳ぎはどうだったかってェ?
ハァ!?
今の今までジャージ着てあくびばっかしてたくせに、急に張り切ってあんな泳ぎされたらよォ、、、
荒北は不安そうにプールに目をやる沙織をチラリと見て呟いた。
「、、、カッコ良かった」
に決まってンだろーが!!
驚いた顔で沙織は荒北をまじまじと見た。
何だよ。
嘘じゃねェ。
本当だヨ。
「泳いでるテメェはカッコ良かったヨ、、、」
そんで、、、綺麗だった。
、、、クッソ、マジで誰にも見せたくなかったぜ、、、。
荒北は頬をかいた。
顔がやけに熱かった。
チラリと沙織を見る。
すると沙織は今までで1番穏やかな顔で笑っていた。
「そっか。ありがとう」
「、、、ッ!」
それ見た瞬間、ドクンと心臓が再び跳ねて、荒北は固まった。
沙織はそんな荒北に御構いなしに話を続けた。
「私もインターハイでアンタを見てそう思った。」
ハァ?
「私もアンタみたいに泳ぎたくなった」
なんだよ、それ。
「そんで決めた。私、大学にいく」
そう言って沙織はニッコリと笑うと、真剣な顔でこう言い放った。
「大学でもう1回全国目指してみるよ」
マジで、テメェは。
その瞳はまっすぐ荒北を捉えて、荒北の心臓を脈打たせ続けた。
「つまりアンタは誰が何と言おうとカッコ良かったから、、、2位で悪かったなんて私には言わなくていいからな!」
そう言った沙織の頬は少しだけ紅潮して、すぐにくるっと女子の列に向き直ると、立ち尽くす荒北に手を振った。
「話はそんだけ!それじゃな!」
何なんだ。
「コラァ!香田!!どこ行ってたぁ!?」
戻るなり強面の教師に怒鳴られる沙織。
「スンマセン!ちょっと野暮用で!」
しかしその顔はやっぱり嬉しそうで、
そんな事言われたら、
俺はまた期待してもいいのか?
、、、なーんて、思っちまうだろーが。
それを見ていた荒北もつられて少し笑ったのだった。