第6章 秋は夕暮れ①
「ちょいちょい!荒北くん!」
授業が始まると後ろの男子が荒北の肩を叩いた。
「ア?」
不機嫌そうに振り向く荒北。
「ア?じゃないよ。何だよさっきのは」
「知らねーよ」
「知らないワケあるかぁ!!」
「ウッセー!バァーカ!」
「バカとはなんだ、バカとはぁ!」
荒北は溜息をつき、突っかかる男子に背を向けた。
だってよォ、
それを皮切りに周りの男子達もヒソヒソと話し出す。
「あれって香田だよな?」
「俺、アイツを見る目変わったわ」
荒北はその視線の先にいる沙織をチラリと見た。
マジで俺にも分かんねェんだ。
今、目の前で何が起きてるのか。
嬉しそうに飛び込み台に上がる沙織。
ただ、、、なんつーか
「香田ってあんなに可愛かったっけ?」
誰かが後ろでそう言った。
「位置について、、、」
沙織がまっすぐな体を折り曲げる。
ピッ!
笛の音と同時に飛び込む沙織。
その直前沙織の目が荒北を捉えて微笑んだ。
荒北は目を見開いた。
すーっと流れるように水面に吸い込まれる沙織の身体。
キラキラと太陽を反射する水の中を沙織の身体はしなやかに進み、
タッ
やっぱテメェは綺麗だよ。
その手は誰よりも速くゴールに触れた。