第6章 秋は夕暮れ①
な、、、
「コラ!香田遅刻だぞ!!」
体育教師に怒られる沙織。
なんだ?
荒北はその姿を見て固まった。
「すんません、、、久々に泳ぐんで緊張して眠れなくて、、、」
珍しく素直に謝る。
「はぁ?しかも何だ、その水着は!指定のものじゃないだろーが!」
その通り、沙織が着ていたのは他の女子達が着ている所謂スクール水着ではなく、脚の付け根部分ギリギリまで生地がカットされた競技用水着だった。
普段やたら長いスカートやジャージで隠れた綺麗な手足がその間から真っ直ぐに伸びて露わになる。
その姿に男子だけでなく女子も見惚れた。
「イイ、、、」
荒北の隣にいた男子が茫然と呟く。
ゴクリ、、、
荒北は何も言うことができず、ただ生唾を飲んだ。
「すみません、高校で泳ぐつもりなかったんで指定の水着買ってなくて、、、」
悪びれもせず正直に話す沙織。
「何ッ?」
その言葉に教師の眉がピクッと上がった。
すぐさま沙織は教師をなだめた。
「まぁまぁ先生。ケド、もうこれで水泳は最後なんだし、今さら買っても、、、でしょ?」
「ぐ、、、」
唸る教師。
「私、今日はめっちゃ頑張って泳ぐからさ、許してよ」
そう言って沙織は不敵に笑った。
「は?一体どういう、、、」
「あ!!おーい、荒北!!」
教師の言葉を遮って沙織が手を振る。
その先にはプールサイドに座る荒北がいて、
「、、、ッ!」
一気にクラスメイトの視線が驚く荒北に集中した。
マジでコイツは、、、
そんな荒北を見て沙織は白い歯を見せてニカッと笑った。そして
「ちゃんと見とけよー!」
とさらに大きく手を振った。
何なんだヨ。
「コラっ!まったく、お前は!男子のジャマをするな!もう授業始めるから、とりあえず座れっ!!」
すぐに取り押さえられて、無理やり座らされる沙織。
しかし、その表情はやけに楽しそうで、授業中にそんな表情の沙織を見るのは、荒北だけでなく誰もが初めてのことだった。