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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第1章 春はあけぼの


その後も荒北は沙織に何かを言ってくることはなかった。
授業中は意外と真剣にノートを取ったり、たまに窓から外を眺めたり。沙織の中で一番予想外だったことは教師に当てられても面倒くさそうではあったが回答し、正解を出していたことだ。そして休み時間には新開と話す。
態度は乱暴だが、それ以外はフツーの生徒だった。
そんな様子を見て、さらに自分のした事が悔やまれた。
あんな事をしたんだ、無視されて当然だ。荒北はきっと沙織に関わらない方がいいと判断したのだろう。
、、、このままお互いずっと関わらない方がいいのかもしれない。だけど、、、
沙織は決意を固めた。

昼休み。
気がつくと、隣にはもう荒北の姿はなかった。
すこし迷い、沙織は新開の席に向かった。
沙織が近づくと、新開の周りにいた男子たちが「うわっ!」とのけぞった。
「ん?香田さんじゃないか。どうかした?」
新開はニコッと沙織に応じた。
沙織はなぜ新開が自分の名前を覚えているのか分からなかったが、そこは何も聞かなかった。
そして俯きながら、聞いた。
「あーあれ。えーと、あ、荒北はどこか知ってるか?」
我ながらモジモジとしてしまった。それがまた恥ずかしく、顔が熱い。
新開は一瞬不思議そうに沙織を見たが、またニコッと笑い答えた。
「あー靖友かぁ。たぶん屋上にいるぜ。靖友はあの場所が好きだから」
屋上、、、。
「そうか。ありがとな!」
沙織はそう言うと同時に駆け出した。
その背中に新開が声をかける。
「靖友はベプシが好きだよ!」
心臓がかすかに早まった。沙織は無意識に自分の胸を手で押さえた。

「はぁー、怖かったなぁー!荒北の奴ケンカでもしたんかな?乱闘モンになるんじゃね?それにしても新開、よく普通に話せるな!」
沙織が出て行った途端、戻ってきた男子達が胸をなで下ろす。
「俺、香田さんは良い人だと思うんだよ。それに可愛いし。」
新開はご飯を頬張りながら笑った。
「可愛い!?俺、そーゆー目で見た事ねーわ」
「確かに!可愛いとかいう以前の問題だよな」
と他の男子達は笑ったが、新開に気にした様子はなく、ただ沙織が出て行った扉を見ていた。
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