第6章 秋は夕暮れ①
翌朝。
「あー!クッソ!なんで1限目から水泳なんだっつーの!」
まだそれほど高くない位置から日が差すプールサイドで、荒北はペタペタと貧乏揺すりをしながらイラついていた。
「靖友、火曜日はいつも1限目から水泳だろ?何をそんなにイラついてるんだ?」
そんな荒北の肩を新開がポンと叩く。
「ぐ、、、」
新開、、、。
荒北はそうやって爽やかに笑う新開を見て固まった。
「ん?」
不思議そうな顔で見返す新開。
「ッ!何でもねェよ!」
荒北はパッと目を逸らした。
新開は自分に頑張れと言った。
それはたぶん応援してくれているということだが、何となく気まずいような気がした。
アイツのこと
好きになったって
言った方がいいのか、、、?
沈黙する荒北。
しかしすぐにその沈黙は破られた。
「おーい、荒北!なーにイライラしてんだよ!今日が最後の水泳の授業だからか?さてはもう女子の水着が見れなくなるのが悲しいんだろ??」
と近くにいた男子が荒北の横でニヤリと笑った。
「ちっげー!バァーカ!」
すぐさま大声で言い返す荒北。
しかし他の男子達も気にせずどんどん寄ってくる。
「なになに?荒北が女子の水着を見れなくなるから寂しがってるって?」
「そうだよなぁ。この先俺達を待っているのは受験だけだなんて、、、悲しすぎんだろぉぉ!!」
「あー!一体、俺は何を楽しみに生きていけばいいんだー!!」
しまいには荒北を置いて、自分達だけで騒ぎ出す男子達。
「ははは」
それを見て新開は楽しそうに笑った。
「チッ!!」
荒北は舌打ちをしてうずくまった。
っつーか、俺がイライラしてンのはそこじゃねェ!
俺がこんなにイラついてンのは、、、
荒北の貧乏揺すりが速くなる。
アイツがまだ来てねェからだ!!!