第6章 秋は夕暮れ①
「なっ!んなモン、誰も期待してねーっつの!!」
荒北がすぐさま怒って言い返す。
「でも楽しみにしてたんだろ?」
「ウッセ!バァーカ!!」
そんな様子もおかしくて沙織は笑った。
荒北。
私はあの晩、もしもインターハイで箱学が優勝したらって、決めてたことがあったんだ。
アンタ達は優勝しなかった。
だけど私は、、、
やっぱりアンタに伝えたい。
沙織はヤンキー座りで不貞腐れる荒北にピッと指を突きつけ低い声でこう言った。
「明日の朝、アンタに言いたいことがあるから、、、絶対に遅刻すんなよ」
「アァ!?んだそれ、、、ってオイ!!」
言い返そうとする荒北をスルーして屋上を後にする沙織。
重い扉を閉めてパタッとそこにもたれかかると、すぐに胸を押さえた。
「ハァ、、、」
その心臓はドキドキと鳴り響き、沙織の身体中に熱を送る。
背中に当たる扉がヒンヤリと冷たくて気持ちいい。
「ホントあっちーな、今日」
沙織は制服の首元をパタパタと扇ぎながら嫌そうに呟いたが、その表情はとても晴れやかだった。