第6章 秋は夕暮れ①
「ッシャ!!」
痛そうに腕を押さえて悶絶する荒北を前に、沙織はガッツポーズを決めた。
「ぐっ、、、テメェ、どんだけなんだヨ」
荒北は苦しそうに呻いた。
「はっはっは!!どーだ!これで負けたテメェの方がバカ決定!!」
まるでバカな小学生男子の様に喜ぶ沙織。
クッソ、、、コイツめちゃくちゃムカつく、、、
荒北は唸ることしかできなかった。
ザッ
そんな荒北の前に沙織がしゃがみ込む。
ア?なんだ?まだバカにしたりねェってか?
荒北は不機嫌そうに顔を上げた。
すると沙織は白い歯を見せて笑いこう言った。
「だからさ、アンタにもらったこのベプシは、誰がなんと言おうと美味いんだってことで!」
コイツ、、、
荒北は呆然と沙織を見た。
先ほどまで沙織の手に触れていた手がやけに熱く感じる。
マジでコイツは、、、大バカ野郎だ。
そして一瞬俯いてニヤリと笑うと、沙織に向かって指を突きつけた。
なぁ、香田。
もし今日テメェが許してくれたら、もう一つ言いてェことがあったんだ。
「ハッ!やっぱテメェの方がバカだろ!!」
「ハァ!?負けたクセにこの、、、」
予想通り突っかかってくる沙織の言葉を荒北は遮った。
「ウッセ!バァカ!コッチはあの日、テメェにベプシを奢ってもらうのを楽しみにしてたんだっつーの。、、、結局、2位だったケドよ、それに比べたらこんなモン、水の方がマシだっての。」
沙織はポカンと口を開けて荒北を見つめている。
ンだよ、、、だからそんなに見るなって。
言い難ェだろーが、、、。
「つまり、何が言いてェかっつーとだなァ、、、その、、、2位しか取れなくて悪かった、、、あと、、、見に来てくれてありがとヨ、、、」
沙織の目が大きく見開かれる。
荒北は思わず目を逸らした。
「あ!あんま覚えてねンだけどよォ!!なんつーか、、、」
声が上ずって、顔が熱くなる。
それでも荒北は熱くなった息を吐き出して、もう一度息を吸い込みこう言った。
「、、、嬉しかった、、、」