第6章 秋は夕暮れ①
沙織の瞳の色がハッキリと分かるほどの距離。
少し茶色がかったその瞳には、自分の顔が映っていた。
なぁ、香田
テメェその見た目でどんだけイイ奴なんだヨ。
、、、どんだけ可愛いんだヨ。
「俺は、、、」
「荒北?」
遠くの方で沙織が呼んでいるような気がしたが、荒北の耳には入らなかった。
やっぱりテメェが好きだ。
なぁ、このままさ、
沙織の息遣いを感じるほどの距離。
俺のモンになっちまえヨ。
熱い吐息が漏れるその唇に荒北が唇を近づけた時、
「ごめん!嘘!!信じた?ほんとは全然痛くない!ほーらこのとおり!!」
と言って沙織が遮った。
荒北はハッと我に返った。
目の前には必死に笑う沙織がいた。その目は荒北を心配そうに見つめている。
「ハッ!しょーもねェ嘘ついてンじゃねーヨ、バァカ!」
一瞬固まる荒北だったが、すぐに沙織の腕を振り払い、顔を逸らした。
、、、えぇと今、俺、
完全に拒否られた、、、?
荒北の心臓はドキドキと鳴り続け、身体中に熱くなった血液を送っている。荒北は俯いた。
いやいや分かってンよ!俺が悪ィ!
コイツは別に俺と友達になりたいって言っただけだし、好きだなんて一言も、、、
っつーか俺もコイツに言ってないじゃナァイ!!!
完っ全に順番間違えてンよ!!!
荒北は頭を抱えた。
「ごめん、荒北。そんなに気にするとは思わなかった」
そんな荒北の耳に沙織の声が響く。
荒北は目を丸くして沙織を見た。
オイオイ、何でテメェが落ち込んでだよ。
顔あげろよ。
落ち込んでンのはコッチなんだよ!
、、、ってかコイツ、、、まさか、、、
沙織の心配そうな目が荒北を捉える。
コレ、多分気づいてねェー!!!
荒北は大きく溜息をついた。