第6章 秋は夕暮れ①
「っつかアンタまだ顔赤いけど?」
そう言って沙織に顔を覗きこまれ、荒北はビクッとした。
「ウッセー!バァカ!!」
毒を吐きつつサッと身を引く荒北。
まったくテメェは
人の痛い所ばっかり突きやがる、、、っつーか、顔近ェんだヨ!!!
「ってかさぁ、アキちゃんの話じゃないなら、アンタの話したいことって何だったの?」
ふと思い出したかのように沙織が尋ねてきた。
そういや、、、すっかり忘れてたケド、
俺ァ、コイツに謝りに来たんだった。
思い出した途端に蘇ってきたのは沙織の柔らかな感触で、荒北の視線は自然と下がった。
ヤベェ、、、スタイル良すぎンだろーが、ちくしょうが。
っつーか、よく考えたら、、、あの時、お前のそれが気持ち良すぎて寝ちまってゴメンナサイなんて、、、
「んー?」
その視線の先に突然沙織の顔が現れて、荒北は思わず目を逸らした。
「なっ!何でもねェ!!」
絶対言えるかっつーの!!!
「何でもねェのにあんなに強く腕掴んだのかよ!ホラ!けっこー痛かったんですけど?」
そう言って沙織は荒北の目の前に腕を突き出した。
「それはっ、、、」
荒北はパッとその腕を掴み、目を見開いた。
あの時ついたのか、、、?
沙織の腕には痛々しく赤い跡が残っていた。
その跡を見た瞬間、荒北の胸は締め付けられた。
必死だった。
このまま一生、お前と話せなくなるんじゃないかって。
、、、今考えたらバカみてェだけど。
「ごめん、、、」
あの時俺は
そんなの嫌だと思った。
怖かった。
怖くて、必死で
もう離さねェなんて勝手に思って
痛い思いをさせちまった。
ケドお前はそんな俺でも、、、
一緒にいたいって
あんな必死な顔で、
泣いたりなんかもしてくれちゃって、
しかも俺と俺の彼女(ンなもんいねーケド)の
仲を心配してたりもして、、、
荒北の手に沙織の腕の温度が伝わる。
こんなに蒸し暑いのにサラッとしてヒンヤリとした気持ちいい感触。
荒北は今度はゆっくりと優しい力でその腕を引き寄せた。