第6章 秋は夕暮れ①
「ごめん、荒北。そんなに気にするとは思わなかった」
沙織もバツが悪くなって荒北から目を逸らした。
そんな沙織を見て荒北は溜息をついた。
「ハァ、、、。ま、でも実際赤くなってンだ。それはマジで悪かった、、、」
素直に謝る荒北を見て沙織はキョトンとした。
「ンだよ、、、っつーか、コレやるヨ」
そっぽを向いた荒北がそう言って沙織の前に出した物を見て、沙織は目を丸くした。
「コレはァ、、、もともとテメェと飲むつもりで買ったから詫びにはならないかもしれねェンだケド、、、良かったら、、、一緒に飲まねェか?」
頬をかきながら途切れ途切れにそう言った荒北の手にあるもの。
荒北がずっと持っていてくれたのだろう。
それは決して冷えたとは言えない見た目の
ベプシだった。
それを見て沙織の顔には思わず笑みが零れた。
あぁ、そうだった。
アンタはこういう奴だった。
そして沙織はそのベプシを受け取って、こう言った。
「そこまで言うなら飲んでやるよ」
いつもそうやって
私をこんな気持ちにさせる。
「ブーッ!!なんだコレ!ぬっり!マッズ!!」
隣でベプシを口に含んだ荒北がそれを大袈裟に吐き出した。
「うっわ!アンタそういうのやめろって!汚い!!」
思わず飛び退く沙織。
その手にあるベプシはもう半分しかない。
「だってよォ、これはもうベプシじゃねェ!っつーか、テメェよくこんなモン飲めたなァ!」
自分が渡したくせに、荒北は沙織の持っているベプシを見て顔を歪めた。
そうだな、確かにマズイ。
ってか、ホントは炭酸苦手なんだけど。
沙織はその顔を見て微笑んだ。
そして残りの半分を飲み干した。
「プハー!」
アンタが私と飲むつもりで買ったなんて、
そんなこと言うもんだから、
「そう?コレ、めちゃ美味いじゃん」
なんかメチャクチャ美味しくて
「ハッ!バァーカ!味音痴なんじゃねェの、お前」
「コレをマズイって感じるアンタの舌の方がバカなんじゃない?」
「ハァ!?何だやンのかコラ。このバァーカ!!」
メチャクチャ嬉しいだなんて
「おぅ!やってやるよ!ホラ右手出せよ、また取っちめてやるから」
思っちゃうよ。
はは、バカみたいだろ?