第6章 秋は夕暮れ①
「ウッセーよ」
そう言って目を逸らして頭をかく荒北。
何だコイツ、、、
その顔はまだ赤い。
「プッ!アハハハ!!」
ちょっと可愛いじゃん。
沙織はその様子が可笑しくて吹き出した。
「んなっ!テメェ、笑ってンじゃねーヨ!ったく、さっきまで泣きそうになってたクセによォ、、、」
「ハァ、、、あーそれは、、、」
もうアンタと話せないと思ったから、、、
なーんて、言わないけど。
「もういいや」
だって、ホラ。
「何だそれ」
呆れ顔で溜息をつく荒北。
またアンタと話せてる。
「っつか、アンタまだ顔赤いけど?」
何でかな?
さっきまでのが嘘みたいに楽しくて。
「ウッセー!バァカ!!」
アンタのそれも嬉しいの。
「ってかさぁ、アキちゃんの話じゃないなら、アンタの話したいことって何だったの?」
そう聞いた途端、固まる荒北。
その顔はさっきよりも赤かった。
「んー?」
荒北の顔を覗き込む。
するとハッとしたように荒北が答えた。
「なっ!何でもねェ!!」
「何でもねェのにあんなに強く腕掴んだのかよ!ホラ!けっこー痛かったんですけど?」
そう言って沙織は荒北の顔の前に腕を突き出した。
ほんとはそんなに痛くないんだけど、、、。
ニヤリと笑う沙織。
「それはっ、、、」
荒北は一瞬驚いた顔をして、パッとその腕を掴んだ。
えっ?
その顔は苦しそうに歪んで、
沙織を引き寄せた。
その手は先程と比べものにならないくらい優しくて、沙織は思わずドキドキした。
「ゴメン、、、」
荒北の息遣いが分かるほどの距離に、
沙織は動くことができなかった。
「俺は、、、」
荒北の瞳が少し潤む。
その目を見て沙織の胸はズキンと痛んだ。
あれ?おかしいな。
「荒北?」
沙織は荒北の目を覗き込んだ。
その目はやはり辛そうで。
ヤバい、からかいすぎた??
沙織は焦った。
「ごめん!嘘!!信じた?ほんとは全然痛くない!ほーらこのとおり!!」
そう言って笑う沙織の腕を荒北はサッと振り払い、目を逸らした。
「ハッ!しょーもねェ嘘ついてンじゃねーヨ、バァカ!」
その顔は怒っているように見えた。