第6章 秋は夕暮れ①
どれくらい時間が経っただろう。
それ程経っていないような気もするし、
永遠に感じられるような気もする。
荒北は暗い天井を見上げながらそんなことを考えていた。
冷えていたペットボトルはもうぬるくなって、かなりの雫が床に落ちて、小さな水溜りを作っていた。
グゥ、、、
荒北の腹が空腹を訴えていた。
そういやァ、昼メシ、食ってねぇナ、、、
荒北は早く早くと栄養分を要求する胃の辺りをさすった。
新開と沙織の話し声がまだ微かに聞こえていた。
ハッ、まったくこんな所で俺ァ、何してンだろーナ、、、
荒北は自嘲的な笑みが浮かべた。
「、、、もう帰るかァ、、、」
そう呟いた時、背中に当たる冷たい扉がギィと開いて荒北の頭を打った。
「イッテ!!!誰だァ、コラ、、、」
眉を吊り上げてバッと振り向く。
「何だ、靖友。そんな所にいたのか」
扉から入ってきたのは新開だった。新開を見て一瞬ギョッとした荒北だったが、どこかでホッとした自分に気づいた。
新開で、、、良かった、、、か?
「こんな場所で何してるんだ?」
ポケットに手を突っ込んで荒北を見下ろす新開。その後ろには明るい光がさして荒北は目を細めた。
まったくテメェは眩しいだろーが、、、。
荒北には光の中に立つ新開と暗い廊下でしゃがみ込む自分が対照的に見えた。
ナァ、新開。
アイツは何を話してた?
俺の話はしてたか?
「ウッセ!、、、テメェには、関係ねぇだろーが」
荒北はパッと立ち上がり、持っていたペットボトルを背中に隠した。
アイツはどんな顔をしてた、、、?
、、、っつーか、俺ェ!なぁに隠してンだよ!
めちゃくちゃ不自然じゃナァイ!!
「いや、関係ないこともないんだぜ?」
荒北の挙動を見て一瞬新開は微笑み、ズイッと荒北に近づいた。
その近さに荒北は思わず身体を反らした為、背中が壁にぶつかった。
新開の大きな瞳が荒北を捉える。
「ぐっ、、、」
その新開の目があまりに真剣で、荒北は目を逸らすことができなかった。
「おめさんにはちゃんとしてもらわないと、俺が諦めた意味がないからな」
「??」
荒北の頭上に?が浮かぶ。
その様子を見て新開は再びフッと笑って、荒北から離れた。
「とにかくさ、もしまた沙織ちゃんを泣かせたら、次はないんだぜってことで」
新開はそう言って階段へ向かった。