第6章 秋は夕暮れ①
「沙織ちゃんが笑ってくれるなら誰に泣かれても俺はいいよ」
振られたも同然なのに
本当にバカだよな?
でもさ
ずっと、、、
新開は前を向いた。
あの飛び込み台から水に入る君に
この目を奪われたあの日から
ずっと
君だけを見てきたんだ。
目の前には校舎に繋がる扉が見えた。その扉は微かに開いて、その先で何かがキラリと太陽を反射して光ったのが目に入った。しかしすぐにその扉は静かに閉じて、その光も見えなくなった。
新開はそれを見て、ふっと笑った。
だから分かるんだ。
君も楽しんでくれているって。
でも、、、
それもこれで終わりだな、、、。
「その顔じゃなかったら嬉しいんだけどな!」
沙織はそう言ってニカッと歯を見せて笑い、新開の背中を叩いた。
「厳しいなぁ」
本当はもう少しだけ
この楽しい時間を過ごしていたかったけれど
「ありがとう、新開。ホント、これ食べたら元気出たわ」
君がそんな顔で笑ってくれたなら
俺はもう十分だ。
「そうか、良かった」
新開はそう言って笑い、立ち上がった。
それにそろそろ奴さんが
泣いてるかも、、、
なんてな笑
「もう行くよ。なんかそこでずっとコソコソ俺が行くのを待ってる奴がいるみたいだし」
制服をはたいて新開は沙織を振り返った。
神様。
やっぱり今日は
【当たり】だったよ。
「は?」
目を丸める沙織を見て新開は笑った。
そして沙織に人差し指を向けてこう言った。
楽しかった。
また話そう。
今度は友人として。
美味しいものでも食いながら。
「バキュン」
はは、今回は君の驚いた顔が見れた。
いつかまたこのポーズについても
ツッこんでくれ。
、、、たぶん本当のことは言わないけれど。
だって、恥ずかしいだろ?笑
お詫びにもう少しパサパサしてないものを用意しておくよ。
それは気に入ってくれると嬉しいな。
そして新開は校舎へ続く重い扉をゆっくりと開いた。